フルール・マリエ
来店した山口様は新郎新婦と新郎のお母さんの3人で訪れた。
新郎新婦と共に両親などが来店することは珍しくはなかった。
新婦とそのお母さん2人で来店して楽しそうにドレス選びをする場面にも立ち会った事がある。
山口様は和装のみということで、白無垢と色打掛の2着を選ぶ予定となっている。
和装担当という役割はあるものの、人数が多いわけではないので、最初に希望を聞くのはコーディネーターなら誰でもやる事になっており、和装の提案もしていくため、和装の勉強も日々している。
ただ、和装担当は私達より遥かに着物の事をよく知っているので相談にのってもらったり、柄の説明や小物を合わせる時、簡単な着付けを手伝ってくれるようになっている。
椅子をもう一つ用意し、まずはどんな色打掛を希望しているのか訊ねると、真っ先に口を開いたのはお母さんだった。
「清楚な感じがいいわね。春菜ちゃんには、派手な色より落ち着いた色の方が絶対似合うもの」
同意を求めるように、隣に座っている新婦に、ねぇ?と声をかけると、新婦はぎこちない笑みを浮かべた。