フルール・マリエ


胸まで伸びる黒髪のロングストレートがつやつやとしている新婦は色白だけれども、唇は紅を塗ったように赤くて綺麗なので、和装がとてもよく似合いそうだったし、お母さんの言うように清楚な雰囲気だった。

反対にお母さんはアウトドア派なのか、日焼けをしていて、髪もショートの活発そうな印象がある。

「色のご希望などはございますか?」

新婦を見て訊ねてみると、新婦が口を開きかけようとしたところを、お母さんが明朗な声で遮った。

「水色なんかいいわね。知的そうだわ」

新婦の顔を再び見ると、そうですね、と頷いたが、少し躊躇いを感じる動きだった。

温和そうな新郎は新婦の様子を伺いながら、落ち着かないようではあるものの、特に何か発言するようでもなかった。

明らかに、新婦同意のもとではなく、お母さんの独断と思われた。

こう言う場合は、新郎がたしなめてくれれば良いのだが、この様子だと期待できなさそうだった。


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