フルール・マリエ


全身鏡が壁に取り付けられた六畳程の和室に案内し、まずは色打掛を3着出してみることにした。

「色打掛は色の種類もありますが、柄の種類も豊富で意味も様々です」

畳の上に柄が見えるように1着1着丁寧に並べると、3人は感心した顔で見下ろしている。

「高貴の象徴である牡丹、長寿を表す鶴、美しさを象徴する梅、と色打掛には良くある柄ですね。新婦様は小柄な方ですので、柄も小さい物の方が良いかと思います」

どれも小さ目の柄なので落ち着いた印象になる着物も、他の柄がいくつも重なる事によって華やかな印象にもなる。

牡丹の柄は淡いピンク色が入った着物、鶴は水色、梅は赤、と色の入り方によっては派手になりそうな赤でも清楚なイメージの着物も多々ある。

清楚、というお母さんの希望を逸脱しない状態で、少し選択範囲を広げてみることで、新婦の様子を伺ってみることにした。

新婦の顔を見つめると、視線が梅柄の赤の着物に注がれている。

「水色がいいと思ったけど、こう見るとどれもいいわねぇ」

「でしたら、まずはこちらの梅柄の赤に致しましょうか」

本当に着付けてしまうとそれだけで時間がかかってしまうので、服の上から羽織り、柄が集中している特に後ろが綺麗に見えるように着物を整える。



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