フルール・マリエ


色打掛でも赤は人気の色で、赤色の割合や柄の違いで何通りも存在する。

白無垢も着るのなら、色打掛は鮮やかに色が入っていてもいいのではないかと思うし、主張しすぎない色や柄も小柄で清潔感のある新婦には良く似合っていた。

鏡に映る新婦の顔も先ほどより和らいでいるようだった。

「でも、赤って普通よね。梅も何だか幼いというか」

新婦の顔が再び影行ってしまうが、お母さんはそれに気づくことなく、次は水色も、と促した。

もちろん、水色の着物も新婦に良く似合っていたが、さっきよりも口元が固い。

それが、赤色または梅柄が良かったからなのか、お母さんに口出しされてしまったからなのかは判別できなかった。

「新郎様は2つの着物を見て、どう思われましたか?」

「どちらも似合ってると思います」

「私は今着ている方がいいと思うのよ。春菜ちゃんはどう?」

「素敵だと思います」

浮かべた微笑みが本音なのかどうか判別する前に、元の表情に戻ってしまった。

結局、取り置きしておくのは水色の着物ということになり、3人の帰りを見送った。



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