フルール・マリエ


「うんっ、すごい、春菜に似合うよ。着物の意味も感動しました」

最後の言葉は私に向けられて、新郎の顔が高揚している。

新婦はハッとした顔をして、お母さんの様子を伺うように視線を向けた。

お母さんはもう一度着物全体に視線を巡らせて、にっこり微笑んだ。

「ほんとね。とても素敵。前から後ろを見た時に、思わずときめいちゃうわ」

何度も着物に視線を走らせながら、新婦と着物を何度も褒めた。

「春菜ちゃんは優しい子だから遠慮してくれるけど、家族になったんだからわがままも言っていいのよ。娘ができて私も嬉しいの。この色打掛のように、少しずつでもちろんいいから」

お母さんはそっと新婦の肩に手を添えると、新婦の目に涙が浮かんだ。


まだ白無垢を決める必要があるものの、色打掛は今日のものを第一希望として3人が納得して頷いてくださった。

帰り際、新郎が深々と頭を下げたので、私も合わせて腰を折ってお見送りした。




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