フルール・マリエ
「ブーケトスをキャッチしたのは初めてです」
新作発表会の後、有名デザイナーのトークショーを観覧し、時間通りに終わると参加者達はぞろぞろと会場を後にした。
外に出ると、陽が暮れかけていた。
受け取ったブーケは白を基調とした花々が可愛らしく、持っているだけで香りが鼻腔をくすぐり、穏やかな気持ちになってくる。
「昨今の結婚式ではやらないことも多くなっていますからね。貴重な経験でしたね」
列席者が既婚者ばかりだったり、ブーケトスの時に前に出るのが恥ずかしいなど、様々な理由などからブーケトスを行わない結婚式も多くなっている。
私が出席した結婚式でも、20歳の時に初めて出席した結婚式くらいだったように思う。
「知っていますか?ブーケトスの由来」
「受け取った女性が次に結婚する、という?」
「いつの間にかそうなってしまったようですが、元々は花嫁を守る為の予防策でした」
花嫁を守る、とは結婚式にはあまりそぐわない言葉だと思った。
「参加者が幸せにあやかろうと、花嫁のドレスを引っ張ったり、小物を取ったりしたそうで、その予防策で幸せのおすそ分けとして、ブーケを投げるようになったらしいですよ」
「そうなんですか。そんな由来が今や、次の人が結婚できるということになったんですか。不思議ですね」
「当たり前にやっているようなことでも、辿れば変わった理由だったりするものです」
「それだけ、幸せそうな花嫁が多かったんでしょうね。幸せをおすそ分けしてもいいくらいに自分は幸せなんですから」
これは幸せのかけらなのか、と持っていたブーケを近づけ、改めて香りを感じた。