フルール・マリエ
「神様も俺の味方をしているのかもね」
「どういう意味?」
「雨を降らせて、聖を送るように仕向けてくれたから」
「ただの偶然でしょ」
「その偶然が大事でしょ」
やっぱり、雨に濡れてでも断るべきだったろうか、と思いつつも、フロントガラスを打ち付ける雨にその気持ちも萎える。
「新作発表会、千紘も同伴って知らなかったんだけど」
「それも不満なの?」
「知ってたら、立候補してないよ」
「聖、無自覚なの?俺の事、意識しまくりじゃん。公私混同しないなら、仕事関係で俺が同伴しようが関係ないでしょ」
全くその通りだ。
何も言い返せない。
あくまでも、今回の新作発表会は仕事なのだから、単に上司と共に参加したというだけの話。
それに勝手に意味を持たせようとしているのは、私の方だ。
「この前のことも、無駄じゃなかったってことか」
ショップを回った日のことを言っているのは容易にわかった。
「避けられてるのはわかってたけど、嫌いってわけじゃなさそうだね。ちょっと安心」
安堵感を表情に出した千紘の横顔に、不覚にもときめいてしまう。