フルール・マリエ


千紘はふっと小さく笑う。

「聖がそんなことオッケーするわけないよね。言ってみただけだよ」

口元に笑みを浮かべつつも、どこか儚さを感じる横顔だった。

「お見合い、しないといけないの?」

「んー、次の人は母親が離婚した時に縁があった家族らしくてね。無下にできない、っていうか、母親からも頼まれて断りにくくなってるんだよね」

「会ったとしても、すぐに結婚しなきゃいけないわけじゃないんでしょ?」

「どうかな。断らせてくれればいいけどな。うちの女性達は強引過ぎるから」

自分が千紘の立場だったら、どう思うだろう。

無理矢理、会わせられた人と食事を共にして、もし、そこで気が合えばいいものの、そうでなくても付き合ってみなさい、デート行ってみなさい、と口うるさく言われる環境だとしたら。

千紘にとって、結果的に良い出会いになるかもしれないのだから、何か励ましの言葉で背中を押してあげたい気もする。



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