それがあの日の夢だった
それから今までの事はあまり覚えていない。

ただ、私とお母さんは瓦礫の中からまだ使えそうなものや、服。からに食べ物や飲み物を調達した。

いつまでもここにはいられなかった。
この化け物に破壊され、何もなくなった村には。

「来羽、明日隣の村の船に乗せてもらえる事になったから出発の準備をしてちょうだい」

「お母さん!ほんとに!?」

「ええ、頼み込んだら乗せてくれって。親切な方でよかったわ」

私は安堵のあまりほっと胸を撫で下ろす。
正直焦りに焦っていた。

この村にあったものが尽きかけているというのに脱出の目処も立たず、危うく飢え死にだった。

私は服をまとめてカバンにいれる。

最後の少しだけしかない食事も今食べず、このカバンに入れておいた。この先何が起こるか分からないのだから。



私は他にも何か持っていけるものはないかと瓦礫を漁る。

いろんな場所を漁り村をさまよっていると、どこかからかすかに泣き声が聞こえた。

まさか、村の生き残りがまだいるのだろうか?

私は安堵淡い期待を胸に声のするほうへ向かう。

そこには一人の少年(?)が目を擦り、座っていた。

「あの!」

私はは声をかけ彼のもとに走って向かう。

村の者かという期待はこの時点で打ち砕かれた。

見たことのない人だった。
これは人数の少ない村だからこそ成せるものだ。
蛇人族の村は人数がかなり少ないから村人全員の事が分かるのた。

「…え?」
少年が恐る恐る顔をあげる。

顔のパーツは整っているが、ふくよかな少年だ。小太りというやつだろう。

「あの…大丈夫ですか?」
私は仕方なく少年に聞く。
一度声をかけてしまったものはしょうがない。

自分も非常事態なのにのんきに人の心配をしている自分に嫌気がさす。

「うう、君も思っただろう?なんだこの醜い男はって」
「はい?」

予想外すぎる返答が返ってきて内心焦る。
醜い?何を言っているんだこの男は。

少年は涙を流しながら続ける。

「僕はもうダメなんだ。醜いからダメなんだ。」
少年はより一層涙を増やしながら叫ぶ。

「僕はもう一生女の子と付き合えないんだー!」

後悔した。声をかけたことを非常に後悔した。
めんどくさい。意味の分からないことを叫んでいるこの男が。私はそれどころじゃないのに。

「すみません、もう行きます」
私は一秒でも早くこの場を去ろうとした。
もう面倒事にこれ以上巻き込まれたくなかった。

立ち去ろうとする私を男が引き留める。

「待ってよ、せめて聞いてよ僕の話」

私はそれでも立ち去ろうとした。
でも少し話とやらが気になって振り向いてしまった私の負けだ。
少年の表情にはさっきまでの涙はなく、どこか真剣で深い心の傷を想起させるような暗い顔をしていた。

「分かりました、聞きましょう」

私は仕方なく少年の隣に座った。
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