それがあの日の夢だった
「来羽、来羽」

私の体をお母さんが揺する。
ゆっくりと意識が戻ってくる。

昨日の夜あまり寝ていなかったせいか、船の中で寝ていたようだ。

「来羽、着いたわよ。荷物持って」

お母さんが私の荷物を差し出す。
自分で持てということか。

私はお母さんに荷物をもらい、人の流れに流され、眠気眼で船から降りた。

冷たい風で一気に目が覚める。

今まで感じたことのないくらいの寒さだった。

「来羽、行くよー。ほら早く」

お母さんが遠くで私の名前を呼ぶ。

知らないうちにずっと遠くへ行っていた。

お母さんはどんどん前へ進んでいく。

どうしてそんなに元気なんだろう?

こんなに寒くて辛いのに…。
< 16 / 29 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop