私の嘘は、キミのせい。
Chapter1
キミは、見てない
「花宮、今日も可愛いなぁ……」
キミが彼女を見ながら、そんなことを呟く度に私が堪えた涙は、果たしてどのくらいなんだろう。
キミがそんなことを呟く度に、私が泣きそうになるのを、キミは知らないでしょ。
それを隠すように、私はただ一言「……そう」と呟く。
聞きたくないな、そんなこと。
本当のことを言えば、今すぐにでも逃げ出したい。
……それができないのは、
「どうしたら、花宮を振り向かせられるのかなあ……。奈々佳、なにかない?」
……私が彼の、恋愛相談役だから。
好きな人の恋愛相談役。それって、結構残酷なんだよ。
「……あいさつはできるようになったんでしょ?すごい進歩じゃん!」
口ではそう言いながらも、心の中では皮肉めいたことを考えてしまう。
本当に、すごい進歩だよね。
一か月前、私に突然
『好きな人ができたんだけど、どうすればいいんだろ、俺……』
なんて、弱々しく呟いていたのと比べたら、すごい進歩だよ。
……私はずっと前から好きだったのに、要のこと。なんで花宮さんなんだろう。
……って、そんなのは、私が一番よく知っている。
……泣きたいくらいに。
「でも、好きな人に振り向いてもらえなきゃ意味ねぇよ……」
そう言って、キミは窓の外にいる彼女を眺める。