私の嘘は、キミのせい。
「……綾乃は、さ。大輝のどこが好きなの?」
「……どうなんだろう。“どこが好き”っていうより、“この人じゃなきゃ嫌だ”って思ったな。私は」
「……そっか」
私はどうなんだろう。
要のこと、そこまで好きなのかな。
わからない。
わからないけど、好きじゃなくなるのは難しいみたいで。
「あーあ、なくならないかなぁ……」
光なんて入らない、寒い空間に。
私の小さな呟きは、響くでも消えるでもなく、ただ溶けていった。
綾乃は、何も言わなかった。
隣を見てみると、綾乃が静かな寝息をたてて眠っていた。
……とても、幸せそうな寝顔だった。
……いいのかな。一応、もう授業始まってると思うんだけど。
うん、いいや。だって要に会いたくないもん。
もう、“先生に怒られちゃう”なんて不安はなくなって、私も少し眠ろうかと思った。綾乃見てたら、眠くなってきたし。
今まで、授業サボることなんてしなかったのに。
高校2年生、4月。
キミのせいで、私ははじめて授業をサボった。