私の嘘は、キミのせい。



一人シュンとしていると、要は真っ直ぐな瞳で私を見てくる。


隠し事なんて、要にできるわけがない。
変なところで、勘が鋭いから。ズルいよね。


どうにかその射るような眼から逃れようと、私は無理矢理話題を変える。



「……っ、そういえば要は、花宮さんのどこが好きなの?」
「……前にも言ったじゃん。何回も言わせんなよ」
「え、そうだっけ?いいじゃん、教えてよ」



噓だよ。その話は、死ぬほど聞いてる。

違うか。……死んじゃいたくなるほど。たかが失恋ごときで、と馬鹿にする人もいるかもしれないけど。

今だって、そんな照れたような表情をさせたかったわけじゃない。


でも、いっぱい聞いてるからこそ、もう感覚が段々と麻痺してって、その話だけはちゃんと聞けるようになったんだ。褒めてよ。……なんて。

だから、(とぼ)けたフリをしてでも、その話にするしかなかったんだ。

……花宮さんに関する話題じゃないと、要の話は逸らせないから。


本人は自覚してないみたいだけど、私は知ってる。私だけが知ってる。……なんで私なんだろう。それも残酷。


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