君の手が道しるべ
「ハンターの本領発揮って感じね」

 私も小声で答える。お互い、視線は目の前の料理に向けているし、宴会の座はすでに盛り上がっていて、私たちの会話は他の人には聞こえるはずもなかった。

「ハンターもすごいですけど、狙われてる獲物のほうも相当なもんですよね」

 栞ちゃんはひとりでうなずいている。

「なにそれ。どういう意味?」

 私が訊き返すと、栞ちゃんは眉を上げて、

「あのハンターにロックオンされて、あの冷静さですよ? 笑みは絶やさずに失礼のない態度をキープしつつ、目は完全に冷めてるあたりが、いかに今までハンターに狙われ、かつ逃げ切ってきたかを表してます」

 と真顔で言い切った。
 すごい分析力。

「保険1億の契約をあっさり蹴っただけのことありますよね。ちょっと、うちの社にはいないタイプかも……」

 値踏みするような視線を送る栞ちゃんを、私は苦笑いしながら眺めていた。
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