君の手が道しるべ
二次会に行きましょうよという梨花の誘いを笑顔で断り(どうせ梨花だって社交辞令で誘っているのだ)、店を出た私は駅方向に歩き出した。
さっき化粧室の中から史子に『これから飲まない?』とLINEをしてみたのだけど、『ごめん。今日は実家に帰ることになってる』と返信があった。
歓迎会がなければ、いつも行くバーで一人飲みする予定だったことを思い出して、一瞬足が止まったけれど、思い直してまた家に帰るため駅に向かう。
駅を目指して歩いている間もずっと、大倉主査に向けられた、梨花の作り笑顔が頭から離れなかった。
世の中の男はたいがい、あの笑顔にやられる。梨花もそれをじゅうぶん自覚している。女にはその意図——下心が手に取るようにわかるのに、どうして男にはそれがわからないんだろう。
駅のホームで電車を待つ間、ぼんやりとそんなことを考えていると、突然誰かに肩を軽く叩かれた。
「きゃっ」
突然のことに、つい小さな悲鳴を上げてしまい、思わず両手で口を押さえる。その姿勢のまま振り向くと、そこに立っていたのは、困った表情の大倉主査だった。
さっき化粧室の中から史子に『これから飲まない?』とLINEをしてみたのだけど、『ごめん。今日は実家に帰ることになってる』と返信があった。
歓迎会がなければ、いつも行くバーで一人飲みする予定だったことを思い出して、一瞬足が止まったけれど、思い直してまた家に帰るため駅に向かう。
駅を目指して歩いている間もずっと、大倉主査に向けられた、梨花の作り笑顔が頭から離れなかった。
世の中の男はたいがい、あの笑顔にやられる。梨花もそれをじゅうぶん自覚している。女にはその意図——下心が手に取るようにわかるのに、どうして男にはそれがわからないんだろう。
駅のホームで電車を待つ間、ぼんやりとそんなことを考えていると、突然誰かに肩を軽く叩かれた。
「きゃっ」
突然のことに、つい小さな悲鳴を上げてしまい、思わず両手で口を押さえる。その姿勢のまま振り向くと、そこに立っていたのは、困った表情の大倉主査だった。