君の手が道しるべ
意外な答えに、私はとっさに何も言えなくなってしまった。

「……梨花が?」

 なんとかそれだけは言えたけれど、気づけばさっきから私、単語でしか話していない。
 そして、ずいぶん、間抜け顔になっていると思う。
 
「本人には言わないでくださいね」

 大倉主査は困ったようにふふっと笑った。私もうなずいてから、

「それは、もちろん、言わないけど……でも、いいの? 私にそんなこと言って」

「それは大丈夫でしょう」

 大倉主査が一歩、私に近づいた。そこから私の顔をのぞき込むように、少しだけ首を傾げて、ふっと微笑む。

「だって、永瀬調査役も、藤柳さんのこと嫌いでしょう?」
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