君の手が道しるべ
「はぁぁ……」

 無意識のうちにため息をついた瞬間、背後から、

「沈んでますね」

 と低い声がして私は軽く飛び上がってしまった。

「驚きすぎじゃないですか?」

 大倉主査が皮肉げな笑みを浮かべて立っている。この人はいつもそうだ。なぜかいつも気配がしない。

「毎回突然の登場だからね。驚くでしょ」

「そして毎回驚いてますよね。そろそろ慣れるとかないんですか」

 皮肉げな笑みに負けないように、私も精一杯大倉主査を睨んで言い返した。

「そろそろ登場方法を改めてくれるとありがたいんだけど」

 しかし、そんな私の言葉を軽く無視して、大倉主査は手にしたクリアファイルを私のデスクの上に置いた。

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