君の手が道しるべ
「閉店しまあす」
どこか気の抜けたような副支店長の声とともに、営業フロアとATMコーナーを区切るシャッターが降りていく。
私が勤務する、帝洋銀行南支店、今日一日の営業時間が終わる瞬間だ。
とはいえ、これで仕事が終わるわけではない。銀行の仕事は午後3時から第二部に突入するのだ。
「永瀬さぁん、今日の私の実績、投信3千万です〜!」
降りていくシャッターをぼんやりと眺めていた私の意識を、いっきにこちらの世界に引き戻したのは、甘ったるくてそのくせ我の強い女の声。
声の主は、わざわざ見なくてもわかる。
これほど癇にさわる声を平気で出せるのは私の知る限りたった一人、運用課の藤柳梨花だ。
「3千万とはまた、すごい数字ね」
梨花が差し出した実績表を受け取りながら、私は無理矢理に笑顔を作った。
「そんなことありませんよぉ〜! 田中のおじさまに提案したら、二つ返事でしたよ。あの調子なら、永瀬さんが提案したって絶対ハンコ押してくれてましたよぉ」
梨花は甘えた笑いを浮かべ、顔の前でひらひらと手を振ってみせる。
どこか気の抜けたような副支店長の声とともに、営業フロアとATMコーナーを区切るシャッターが降りていく。
私が勤務する、帝洋銀行南支店、今日一日の営業時間が終わる瞬間だ。
とはいえ、これで仕事が終わるわけではない。銀行の仕事は午後3時から第二部に突入するのだ。
「永瀬さぁん、今日の私の実績、投信3千万です〜!」
降りていくシャッターをぼんやりと眺めていた私の意識を、いっきにこちらの世界に引き戻したのは、甘ったるくてそのくせ我の強い女の声。
声の主は、わざわざ見なくてもわかる。
これほど癇にさわる声を平気で出せるのは私の知る限りたった一人、運用課の藤柳梨花だ。
「3千万とはまた、すごい数字ね」
梨花が差し出した実績表を受け取りながら、私は無理矢理に笑顔を作った。
「そんなことありませんよぉ〜! 田中のおじさまに提案したら、二つ返事でしたよ。あの調子なら、永瀬さんが提案したって絶対ハンコ押してくれてましたよぉ」
梨花は甘えた笑いを浮かべ、顔の前でひらひらと手を振ってみせる。