君の手が道しるべ
おそらく、後者なんだろうと思う。

 あっさりした反応ではあったけど、心の中はたぶん真逆。大倉主査の同席依頼が私にあったことに、彼女が何も感じないわけがないからだ。

「藤柳さん、苦手なんで」

歓迎会の帰り、駅のホームでそう言って微笑んだ大倉主査を思い出す。

「ずいぶんはっきり言うね」

苦笑いで爆弾発言を受け流そうとしたが、大倉主査は平然として続ける。

「永瀬調査役も彼女のこと嫌いでしょ?」

「……なんでそんな」

 ははっ、と大倉主査は小さく笑った。

「見てればわかりますよ。僕の真向かいに座って、眉間にしわ寄せて酒飲んでるんですから」

「眉間にしわ……」

 思わず右手を眉間に当ててしまう。この歳で眉間のしわだなんて、冗談じゃない。くっきり刻み込まれる前にアンチエイジングのクリームでも塗っておかなくちゃ。

 ――って、いやいやいや。そういう問題じゃない! 
 私が梨花のことを嫌っているだなんて変な誤解をされるわけにはいかない。

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