君の手が道しるべ
「またため息ですか。よく飽きませんね」

 隣に立った大倉主査が呆れ顔で言う。

「これはため息じゃないの。緊張の糸が切れたあとの深呼吸なの」

「僕には同じに聞こえますけどね」

「あ、そ」

 まったく、いちいち可愛げのない男だ。最近は妙に私に突っかかってくる。

 ちょっとムッとしながら店内に戻ろうと歩きだすと、大倉主査は大股で歩いて私に追いついてきた。

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