君の手が道しるべ
見失っていたもの。
大倉主査への返事を棚上げしたまま、2ヶ月が過ぎた。
その間、大倉主査から返事をせかされるようなことは一度もなく、今までどおりの上司と部下としての関係が続いた。
プロポーズされたのは私の妄想だったのか、と記憶を疑いたくなるくらい、彼の態度は1ミリも変わることはなく、表面上はとても平和な毎日が過ぎていった。
そんなある日。
栞ちゃんとの帯同外出を終えて帰ってくると、デスクの上に決裁待ちの書類とファイルが載せられていた。
「……池田産業」
数ヶ月前に、大倉主査からの紹介で社長に運用提案をした、あの会社だ。
「どうしたんですか?」
デスク越しに栞ちゃんがひょこっと身を乗り出し、ファイルの見出しに目をとめる。
「あれ? ここ、大倉主査の担当先でしたよね? 大倉主査が提案したんですかね?」
「いや……融資課からは提案できないから、大倉主査じゃないと思う。しかも、これ、提案じゃない。契約まで決まってるよ。ほら、契約書あるもの」
答えながら、私は契約書に押された担当者印を確認する。
くっきり押されたその担当者印は——
その間、大倉主査から返事をせかされるようなことは一度もなく、今までどおりの上司と部下としての関係が続いた。
プロポーズされたのは私の妄想だったのか、と記憶を疑いたくなるくらい、彼の態度は1ミリも変わることはなく、表面上はとても平和な毎日が過ぎていった。
そんなある日。
栞ちゃんとの帯同外出を終えて帰ってくると、デスクの上に決裁待ちの書類とファイルが載せられていた。
「……池田産業」
数ヶ月前に、大倉主査からの紹介で社長に運用提案をした、あの会社だ。
「どうしたんですか?」
デスク越しに栞ちゃんがひょこっと身を乗り出し、ファイルの見出しに目をとめる。
「あれ? ここ、大倉主査の担当先でしたよね? 大倉主査が提案したんですかね?」
「いや……融資課からは提案できないから、大倉主査じゃないと思う。しかも、これ、提案じゃない。契約まで決まってるよ。ほら、契約書あるもの」
答えながら、私は契約書に押された担当者印を確認する。
くっきり押されたその担当者印は——