君の手が道しるべ
「永瀬調査役、ちょっと」

軽く手招きされ歩み寄ると、モデル男は少し会釈をした。

「今日着任した、大倉主査。配属は2階の融資課になるけど、運用係の経験も豊富だって聞いてるから、いろいろ相談してみるといいかもな」

「いえ」

 突然、モデル男……大倉主査が副支店長の言葉をさえぎった。

「相談なんてとんでもないです。僕もまだまだ勉強中なので、永瀬調査役に相談に乗っていただきたいです」

「そうか? まあ、永瀬調査役は営業や運用のことは詳しいから、何か困ったことがあれば相談するといい。な、調査役」

 副支店長は何が面白いのかハハハッと笑い、別の行員のところに大倉主査を引っ張っていく。

 悪い人じゃないんだけど、空気読めないから時々イラッとくるんだよな……

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