君と描く花言葉。
しばらくして、ガチャリと木の扉が開けられた。
「エリカ?なんでこっち……」
「ただいま!」
「…………。おかえり」
セイジは何か色々と思うところがあったみたいだけど。
結局何も言わずに、ただ笑って玄関から出てきて、温室を開けてくれた。
「驚いた?」
「うん、そりゃあ。いきなり大きな花持って帰ってくるんだもん」
「月森さんに貰っちゃったの」
「あはは……あの人、見た目によらずそういうところあるよね。豪快というか、太っ腹というか……」
「うん。でも、すごくいい人だった!」
「そうだね。あそこは暖かくて良い」
話しながら、温室を真っ直ぐに進んで考えていた場所まで行く。
元からこの温室にある、綺麗に咲いた紫色のエリカが置かれている場所。
そこにはまだ隣にスペースがあって、鉢植え一個くらいなら簡単に置けそうだった。
「ねえセイジ。このエリカ、ここにおいても良い?」
「俺はいいけど……持って帰らないの?」
「うーん。家で育てられたらいいんだけど。
温室で育てたほうがきっと綺麗に咲くと思うから」
「そう?」
「あとね。このエリカも、セイジに描いて欲しくて」
セイジに描いてもらったら、きっと優しい世界が見れる気がするから。
もちろん私も描いてみたいとは思うけど、どちらかっていうとそっちの方が本音だった。
「そっか。わかった、じゃあ、咲いたら描こう」
「うん!」
隣同士に並んだエリカは、心なしか嬉しそうに見えた。
こんな可愛い花だもん。孤独なんて言葉は、もう見えない。