君と描く花言葉。
「マーガレットはどう?」
「うーん。……最初は描けてたんだけど」
セイジと一緒にアトリエに入ると、すぐに描きかけのマーガレットが目に入る。
花びらに、ふんわり薄く黄緑色が乗っているだけの絵。
いつも迷いなく描き進めるセイジにしては、進みが遅い。
やっぱり難しいよね……。
「始めはね。なんとなく色が見えた気がしたんだ。
俺のマーガレットとは違う色。
でも……途中から、消えちゃった」
寂しそうに呟いたセイジは、再びキャンバスの前に座る。
そして、ジッとマーガレットを見て。
「……あれ?」
驚いたように、パチパチと瞬きを繰り返した。
「?どうしたの?」
「いや……また見えた、気がして」
「マーガレット?」
「エリカ、ちょっとこっち来て」
「えっ。う、うん」
ちょいちょいと手招きされるまま、私はセイジの目の前まで足を進める。
するとセイジも立ち上がり、少しだけ身を屈めて私と目線を合わせた。
……もうここに通い始めて結構経つけれど。
こんなに近付くのは、多分あの世界の見方を教えてもらった時以来だ。
いや……違うか。あの時はここまで近くなかった。
こんな……鼻が触れそうなほど近くは。