君と描く花言葉。
「はあぁ……エリカってば口固すぎー。
まぁいいや、ほら、早く部活行こ!」
「うん」
にっと笑った高ちゃんに笑顔を返して、カバンを持ち上げる。
……あのヘンテコなニゲラを完成させて以来、私は一度も学校で私の世界を描いたことはない。
変な目で見られる、という理由もないわけではないけど。
明確になんでかって言うのはあんまりなくて、ただ、あれはセイジのところで描きたいって思ったから。
学校では、いつも通りの見たままの色を。
セイジのところでは、のびのびと思ったままの色を使う。
どっちだって絵を描くのは楽しいし、私はそれで満足していた。
そしてセイジも、それは一緒で。
「はあぁ……。やっぱりすごいねぇ、成宮の絵は」
美術室に入った途端、高ちゃんはまた、けれどもさっきとは違い、今度は感嘆のため息を吐いた。
入り口からは遠い場所で描いているけど、それでもパッと目に入ってしまう存在感。
セイジは相変わらず、成宮ワールド全開の花を黙々と描いている。
「うん」
「もー意味わかんない。なんであの色でちゃんと『本物』に見えるのかね」
「本当にそう見えてるからじゃない?」
「そう見えるって。流石に紫が水色に見えるなんてことはないでしょ」
「それはほら、見てる人が見てる人だからさ」
「あー……いや、うん。成宮ならあるかもしれない。
今なんか、すごい納得した」
「でしょ」