君と描く花言葉。
「……うん、こんなものかな」
「セイジ……それって……」
「エリカ。はい、筆」
「えっ?」
満足げな声を出したかと思うと、急にひょいと筆を渡される。
それから、くいっと腕を引かれた。
「こっち。立って」
「へっ?え、セイジ?」
私の腕に触れた手の暖かさにドキリとした心臓に気付かないフリをして、誘われるままにイーゼルの前に立つ。
そこにたたずむイーゼルは、先週までは何もなかったのが、見違えるように生まれ変わっていた。
セイジのと似たような、でも、少しだけハートや小さい花なんかが追加されて可愛くなった模様。
爽やかでシンプルなセイジの柄とは違って、このイーゼルは女の子っぽい気がする。
「ここ。名前、書いて」
「名前?……あ、セイジのやつみたいに?」
「そう」
セイジが指差したイーゼルの左下あたりには、模様が途切れてスペースが空いていた。
隣のイーゼルでは、その場所に筆記体で名前が書いてある。
「……筆記体書けないよ」
「いい。エリカの好きなように書いて。
エリカのだって、わかればそれで」
「私の……」
じん……と、胸が熱くなったような感じがした。
……私の、イーゼル。
そうか。これはもう……セイジの中では、私のものってことなんだ。
私のものが、このアトリエにあっていいって思ってくれてる。
これからも私が来るって、そんな前提で話をしてる。
それが、とてつもなく嬉しかった。