君と描く花言葉。
「じゃあ……書くね」
ちょっと緊張で震えそうになりながら、筆をイーゼルに近付ける。
洒落た字なんて書けないから、普通に。
ただのローマ字でエリカと記す。
……筆記体、勉強しとけばよかったな。
そう思いはするけど、セイジが施してくれた装飾のおかげで字なんて気にならないほど様になって見えた。
「いいね。できあがり」
「ふふ。ありがとう、セイジ!」
「うん。……あ、乾くまであんまり触らない方がいいかも。しばらく置いておいて」
「うん」
返事をしながら、装飾を眺めるのに夢中になる。
すごい。
セイジが、私のためだけに描いてくれたんだ。
セイジの絵は、たくさん、たくさん見てきた。
それこそこのアトリエや温室にはたくさん絵があるし、家の中には本格的なものが至る所に飾られているし、学校でだって嫌でも目に入るくらい目立っている。
けど、これは今までのとは違う。
それを噛みしめるように、生まれ変わったイーゼルを見つめる。
「…………そんなに気に入った?」
「うん、うん!もちろん!いつまででも眺めてられそう!」
「それはよかった。けど、マーガレットも見て欲しいかな。どうしても行き詰まる」
「あ!そういえば、先週よりは進んでる気がするけど。セイジにしては珍しく全然進まないね」
「うん。……でも、今なら、進むかも」
「そう?」