君と描く花言葉。




「気にしないで」


「うん」



不思議そうにしながらも、素直に絵に向き直る姿を見てホッとする。



ずっと覚えていられるように……なんて。


絵とデータじゃ、全然違うのにね。





……セイジは、人は描かないんだろうか。


ふと、疑問に思う。



私の場合、人物画が苦手すぎて全くチャレンジしようとしてないんだけど。


美術部で何度か人物画や風景画を課題として出されたことはあるけれど、どれもセイジと仲良くなる以前のことだから、頑固だった私は見ていない。


つまり、セイジの絵は花をモチーフにしたものしか見たことがなかった。



温室と繋がる家の暗い廊下にも、花の絵しか飾られていないし。


この間、虫は描けないって言っていたから、他のものも描いたことはあるんだろう。



……見てみたいな。



「セイジ。セイジの作品って、廊下ので全部じゃないよね?」


「?うん。古いのは、地下にしまってあるけど」


「地下!?地下まであるの?この家……」


「うん。見る?」


「見る!……あ、絵、中断しちゃってごめんね」


「いいよ。もうだいぶ、出来てきたから」


「えっ?」



びっくりしてマーガレットを見ると、確かにさっきよりかなり進んで…………私の中のマーガレットに、近付いている。


私……どこが何の色なのか、言ってないのに。



なんで、グラデーションの具合までわかるの?



緑系統の色ばかり渡したはずなのに。


茎と花びらの色まで、しっかり描き分けられている。



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