君と描く花言葉。
「どうなのよエリカ!」
「えっ?」
高ちゃんの声で我に返ると、いつのまにか私のアネモネを見ていたはずの先生と高ちゃんの視線は私に移されていた。
全っ然聞いてなかった。
何が「どう」なんだろう。
「えっと……ごめん、何が?」
「も〜〜〜、コンクールだよコンクール!」
「綾瀬は去年出さなかっただろう。
今年こそはどうだ、このアネモネを出してみないか」
……そうだ。
私は去年のこの時期、コンクール用に絵を描いてはいたものの、結局参加は辞退してしまった。
特に何か深い理由があったわけではない。
ただ、中学で参加したコンクールではことごとく惨敗してきたから、どうせ私なんかに入賞は無理だという気持ちがどうしても拭えなかった。
その時は深く考えていなかったけど、もしかしたら天才・成宮セイジとの差を痛感するのが怖かったのかもしれない。
セイジだけじゃない。
入賞を逃すことで、同じ高校生の参加者と比べて、自分が劣っていることをまた目の当たりにするのが怖かった。
頑張っているつもりで、実は中学から何も成長していないのではないかと。
今思えば、こんな中途半端な時期にあのニゲラに3回目の挑戦をしていたのも、その焦りが動機だったんじゃないかという気がしてきた。
上手く描けたら、きっと自分の成長を認められる。そんな期待がどこかにあったんだと思う。