君と描く花言葉。



でも、今は違う。


そんな期待に頼らなくても、自分を納得させる描き方を見つけた。


今なら、いけるかもしれない。


今なら、もし入賞を逃したとしても、それでいて他の誰かが入賞しているところを見たとしても、素直に祝えるかもしれない。




「……そうですね。
今回は出してみようと思います」


「そうか、そうか!よく言った!
今年の2年は全員参加だ、こりゃあ楽しみだなあ」


「やーん、強力なライバル出現ってワケね!
あたしももうすぐ完成するんだから!待ってなよ〜!?」


「あはは。ラストスパートがんばって〜」




それぞれ思い思いの言葉を残して、先生は巡回に、高ちゃんは自分の作品に戻っていく。


自分のことのように喜んでくれている様子の2人を見送り、1人席に着いた。



ぐるりと美術室を見回す。


難しい顔をして絵に向き合う人。


楽しそうに談笑しながら描いている人。


写真を見ながら描いている人。


実物を持ってきて描いている人。



色んな人がいて、色んなモチーフがある。


ここにいるみんなが、ライバルになり得る。


ずっと憂鬱だったその事実が、今はちょっと、やる気に繋がる気がした。



< 144 / 165 >

この作品をシェア

pagetop