君と描く花言葉。
でも、今は違う。
そんな期待に頼らなくても、自分を納得させる描き方を見つけた。
今なら、いけるかもしれない。
今なら、もし入賞を逃したとしても、それでいて他の誰かが入賞しているところを見たとしても、素直に祝えるかもしれない。
「……そうですね。
今回は出してみようと思います」
「そうか、そうか!よく言った!
今年の2年は全員参加だ、こりゃあ楽しみだなあ」
「やーん、強力なライバル出現ってワケね!
あたしももうすぐ完成するんだから!待ってなよ〜!?」
「あはは。ラストスパートがんばって〜」
それぞれ思い思いの言葉を残して、先生は巡回に、高ちゃんは自分の作品に戻っていく。
自分のことのように喜んでくれている様子の2人を見送り、1人席に着いた。
ぐるりと美術室を見回す。
難しい顔をして絵に向き合う人。
楽しそうに談笑しながら描いている人。
写真を見ながら描いている人。
実物を持ってきて描いている人。
色んな人がいて、色んなモチーフがある。
ここにいるみんなが、ライバルになり得る。
ずっと憂鬱だったその事実が、今はちょっと、やる気に繋がる気がした。