君と描く花言葉。
「でもさ〜、結局やっぱ今年も成宮が金賞なんじゃねーの?」
ふと、ちょうど私の斜め後方あたりに席を陣取っている部員から、そんな声が聞こえた。
「まああれはレベチだしなあ。
去年だって圧倒的だったじゃん」
「そりゃあんなの描けるやつがホイホイいたらたまんねぇよ。
中学でも総ナメだったんだろどうせ」
「それならとっくに毎回同じやつが金賞取ってるって話題になって知ってそうなもんだけどな。
そんな話あったっけ?」
「いやあ……覚えてねぇな。
自分と友達が入賞してるかくらいしか見ねぇし。
あ、けど、あの独特な色使いした絵は確かに見なかったかも」
「だよな?一回見たら忘れないと思うんだけどなあ」
確かに……。
言われてみれば、それこそ私も中学の頃は何度かコンクールに応募していたけれど、セイジの絵は覚えている限り見たことがない。
毎回金賞が同じ人だったら、それを覚えている人が1人もいないというのもおかしな話だ。
なんだろう、中学の頃はコンクールには応募してなかったのかな?
あれだけの才能があって応募してないなんてことはなさそうだけど……ちょっと気になるなあ。
聞いたら教えてくれるんだろうか。
ただ、“人に触られるのが苦手”、“描けないもの”、“絵を描いていなかった時期”、今までに出てきた、きっと過去に何かがあったとわかるそれらのワードが、私を臆病にする。
……踏み込んだら、拒絶されそうで。
私には、聞けない。