君と描く花言葉。
「あ、そうだ。エリカ、今日ちょっと部活先行っててー」
「うん?何かあるの?」
「んふふ〜!ちょっとね〜」
人差し指を唇に当てる高ちゃんは少し頰が赤くて、恋をしている顔をしている。
あー、彼氏と約束か。
了解了解。
そういうことなら、野暮な質問はしませんよ。
「おっけー、先行っとく」
「ごめんねー」
「全然いいよ〜」
高ちゃん幸せそうだし。
私は午後の授業を考えるだけで憂鬱になるのに、高ちゃんはそんなこと眼中にないって感じで笑っている。
恋をすると、そんなに変わるものなのかな?
よく、毎日がキラキラ輝いて見えるようになるとか、好きな人を見ただけで幸せな気持ちになるとかって聞くけれど。
私の世界が輝いて見えたのは、あの金賞の絵を見たときくらいかな。
あれはすごかった。
世界がバーン!!!って爆発した感じ。
その時まではただ漠然と絵を描くのが好き、ってだけだったけど、あの爆発がきっかけで、はっきりと「絵が上手くなりたい!」って思うようになった。
あれから気付いたらその絵のことばっかり考えてるし、その絵の作者にだって思いを馳せている。
どんな顔してるのかな。背は高いかな?手は器用そうだなあ。
先生は男の子って言っていたよね。彼の世界観はどんな感じなんだろう?どんな性格なんだろう?
考えれば考えるほどわくわくしてたまらない。
…もしかして、これが恋ってやつなんじゃ?
…………。
…何考えてるんだろ、私。
我ながらくだらなさすぎて、授業開始のチャイムとともに思考をかき消して。
教室に入ってきた先生を見て、また勉強か、とため息をつくしかなかった。