君と描く花言葉。



「ただいま。ごめんエリカ、ちょっと遅くなった」



困り果てたその時、温室の入り口からひょっこりと花を抱えたセイジが顔を出した。


張り詰めていた雰囲気が、一気に和らぐ。



よ、よかった。帰ってきた……!


その顔を見て、どっと安心感が押し寄せる。


女の子の視線がようやく私から外されたことで緊張も解け、救世主の名前が口をついた。



「セイジ……!」


「あれ?なんで亜希奈がいるの?」



セイジの視線が女の子に移る。


きょとんとそう問いかけながら、セイジは持っていた花を近くの棚に置いた。




亜希奈———?


その名前を聞いた瞬間、とある光景がフラッシュバックする。



そうだ。こないだ、温室から出てくるこの子を見たことがある。


『バーカ!』という捨て台詞がやけに耳に残っていて、それでいてその後はすぐ綺麗な笑みを浮かべていた、そのギャップが印象的だった。



セイジは、その子こそが幼馴染だと言っていた。



なるほど。この子が噂に聞く、幼馴染の亜希奈さんか……!!!



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