君と描く花言葉。




「……えっと。……どいてくれる?」


「あっ。ごめん!」



結局成宮くんに言われるまで動けなかった私は、やっとのことでその声に反応する。



何やってんだ私。まじまじと観察してる場合じゃないでしょ。



心の中で自分にツッコミを入れながら職員室の入り口から退こうとして、……今度はちゃんと考えた上で、ハッと思いとどまる。



待て待て、この時間帯に成宮くんが職員室にくる用事なんて、1つしかないのでは?


よく、誰よりも早く美術室に来ている成宮くん。


彼は帰りのホームルームを抜け出して美術室に来ているらしい。


……なぜそれが許されるかって、そりゃあ成宮くんは特別だからさ。


不平等な世の中ですよ。



心の中の黒いモヤをぐっと押し留めて、美術室の鍵を成宮くんに掲げてみせる。



「あの……もしかして、これ取りに来た?」


「……なんで持ってるの?」


「なんでと言われても……私もこれを取りに来たから」


「……ふぅん」



こてん、と首を傾げた彼の姿は、他の男子とは明らかに違う雰囲気を醸し出している。



だって、他の男子がこんな仕草をしても、様にならないもんね。


というか、そんじょそこらの女子にやらせたって様にならないよ。



背が高くてカッコいい見た目なのに、可愛い仕草すら似合ってしまうなんて。



可愛いとカッコいいの両方を兼ね備えてる感じ?



成宮くんのことが好きな子って、絶対いっぱいいるよね。



不思議系イケメンってモテそうじゃん。



そんなことを考えながら、くるりと美術室に向かって歩き出した成宮くんに従って、私も歩きだす。



今だって、表情1つ変わらなくて。


いつも無口で大人しいし、何を考えているかさっぱり読めないけれど。



それでも、どうしてか嫌な感じはしない。



普通、ずっと無表情な人とかは「素っ気ない」「愛想がない」って言われるものじゃない?



なのに、彼はそんな感じじゃなくて。


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