君と描く花言葉。



でも、そんなこと、誰にも……親にも言ったことはなかった。



だって、おかしいでしょ?


言ったって、変な奴って思われて終わるに決まってる。


きっと、私のことも信じてないんだなって思われて、嫌われてしまう。



だから人と話すときも、こんな心が見透かされないように、人に合わせて。


嫌われないように、精一杯取り繕って。



多分高校では一番仲が良い高ちゃんと話すときだって、色々思うことがあっても、すべて飲み込んで話している。



なのに……。


ほとんど初対面と言ってもいいであろう成宮くんに、言い当てられた?



彼は心でも読めるんだろうか。



図星だとバレそうで、振り向けない。


心臓だけが激しく稼働している私に向かって、また言葉が飛んでくる。



「……いや……ごめん。……変な意味じゃなくて。
……エリカっていう花の、花言葉なんだ」


「花、言葉……?」



掠れそうになる声を、必死に絞り出す。


見透かされたわけじゃなくて……ただの花言葉?



……だとしたら、なんてピンポイントな名前なんだろう。


心臓に悪いことこの上ない。



今まで自分の名前を嫌う気持ちは少したりともなかったし、たくさん考えて名付けてくれたお母さんには申し訳ない話だけれど、今初めて少しだけ自分の名前を恨んだ。


バレないようにこっそりと、静かに大きく息を吐き出す。



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