君と描く花言葉。



「あの……私。美術部だからね?」


「え。…………。ごめん、知らなかった」



…………やっぱりかあ〜!



さっきから、どうもおかしいと思った。



だって、美術部だって知っていれば職員室に鍵を取りに来てたのも不思議に思わないだろうし。



自分のことを知ってても何ら不思議じゃないはずだもん。



妙に会話が噛み合わなかったのはそのせいか。



もう一年半も同じ教室で絵を描いてきて、それでも覚えられていないっていうのはちょっとアレだけど……。


やっぱり、成宮くんほどの天才となると周りの人なんていちいち気にしていないのかな。


周りの目を気にしてしまう私とは違って。



成宮くんはちょっと申し訳なさそうに、目をそらしながら手を後頭部に当てる。




「……俺、人の顔とか、名前とか覚えるの苦手で……ごめん」


「いいよ。私、目立たないし」



ずっと黙っているわけじゃないし、暗いわけでもないと思うけれど。


積極的に話す方でもなければ、成宮くんを絶賛する人々に混じって声を上げるタイプでもないから、そりゃあ目立たないだろう。



……いや、もしかしたら人には暗いと思われているのかもしれない。


それは、わからないけど。



私はいつも、感情を素直に表に出すのが苦手で。


今だって『やっぱりか〜!』なんて心では思っているけど、多分表情はあんまり変わってない。


……人からするとわかりにくいんだろうなって、自覚はある。


でも、どうすればいいのかよくわからなくて。人との接し方が、いまいちピンとこなくて。



だからかな。成宮くんの『孤独。寂しさ』って言葉が、やけに頭に残っている。



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