君と描く花言葉。
気付いたら私は、無意識に口を開いていた。
「私なんかにはぴったりかもね」
「え?」
「エリカの花言葉」
「……どうして?」
「一人だから。寂しいから」
「友達、いないの?」
「いるよ。クラスにも、美術部にも」
「……?じゃあ、一人じゃない」
「うん。一人じゃないよ」
「…………。何が言いたいのか、理解できない」
「……ごめんね。なんでもないよ、忘れて」
眉をひそめて怪訝な顔をする成宮くんに、自嘲気味に笑顔を返す。
……あぁ、なんでこんなこと言っちゃったんだろう。
今まで、誰にも気付かれないように隠してきたのに。
一回、言い当てられたと勘違いしたせいか。
それとも、私が成宮くんを良く思っていないからか。
または、成宮くんの浮世離れした雰囲気のせいか。
ずっと心に秘めていた言葉が、ポロリとこぼれ落ちてしまった。
なかったことにしたくて、私は何もなかったように絵に向き直って筆をとる。
えぇと……とりあえず、青をだそう。
気持ちを落ち着けるように、青い絵の具をパレットに広げた。
そんな私を見てか、しばらくして、後ろでも画材を準備しだすような音が聞こえてきた。
よかった……。
もしこれ以上言及されたら、どうしようかと思った。
できることなら、本当に忘れてくれはしないだろうか。
意味のわからない私の妄言なんて、丸めて今すぐにゴミ箱に捨てて欲しい。
今になって、人前でこんなことを漏らしてしまった自分が恥ずかしくなってきた。
ちょっと暑いような気がして、立ち上がって窓を開ける。
……そういえば、成宮くんの表情が変わったの、初めて見たな。
いつも無表情な彼の、眉をひそめた怪訝な顔。
あと、ちょっと申し訳なさそうな顔も見たか。
間違いなくレアだ。
成宮くんにも表情、あるんだなぁ。
なんとなく失礼なことを思いつつ、パレットに新たな色を足す。
青一色だったパレットに、少しだけ紫が混じった。