君と描く花言葉。

マジックポット





「ねぇエリカ。ちょっとおつかい行ってきてくれない?」



日曜日、家でゴロゴロしていた私にそう話しかけてきたのはお化粧途中のお母さんだった。


お化粧はまだ完成していないようで、お母さんは片手に何か化粧道具を持っているけれど。


私には十分完成しているように見えるのだから不思議だ。



そもそもそんなに濃いメイクをするわけじゃないんだから、してもしなくてもあんまり変わらなくない?


お母さんにそう言ったことがあるけれど、絶対変わる!と即座に否定されてしまった。



ほんのちょっとの外出、例えばコンビニに行くだけでも必ずメイクをするお母さん。


メイクをしたことのない私にはわからない感覚だ。



「えぇ〜。お母さん今日仕事でしょ?
帰りに寄ってこればいいじゃん」


「それじゃあ間に合わないのよ!
これなんだけどね、今日までだったのすっかり忘れてて」



渋る私にお母さんが押し付けてきたチラシには、たくさんのメイク道具が載っていて。


その中のセール品と書かれている1つのファンデーションに、赤い丸が大きく付けられていた。


見ると、その店の閉店時間は6時半と書かれている。


7時過ぎ、遅い時は8時を回ったころに帰ってくることもあるお母さんでは、確かに間に合わないだろうけど。



でも、ちょっとお使いって程度じゃない。


だってこの店、電車に乗らないといけないような、隣町の店って書いてあるんだよ?



歩いていける近所の店ならまだしも、隣町って。


行ったこともないよ、そんな場所。



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