君と描く花言葉。
「あれ……本当にこっちであってる?」
色々考えながらしばらく歩いていたけれど、なんだかだんだん人気のない方に迷い込んで行ってる気がして、足を止める。
さっきまではすれ違う人もいたのに、今はあんまりいない。
というか、大通りから住宅街に入ってしまったらしい。
周りを改めて見渡すと、そこにはたくさんの一軒家が立ち並んでいる。
丁度仕事に出払うような時間帯だから、人通りが少ないのだろう。
一本曲がる道間違えたのかな……。
一旦来た道を戻ろうと、くるりと踵を返す。
「……えっ……!なにあれ。温室!?」
振り向いた瞬間、私は右側に見えた家……というか、その横に建っている小屋に釘付けになった。
スマホばっかり見ていて気付かなかったけど。
丁度私が今通り過ぎたばかりだった家の横にはなにか白い建物があって、そのガラスの向こうにたくさんの花や葉っぱが見える。
円柱に屋根が乗ったような形をしたその小屋は、いろんな色をギュッと詰めた魔法の瓶みたいだ。
思わずその家に駆け寄る。
こんな家、本当にあるんだ!
すごい。外から見ただけで綺麗!
中から見たら一体どんな景色なんだろう?
人の敷地に勝手に入るわけにもいかず、敷地外から背伸びをして中を覗く。
中で咲いている花たちは全く名前も知らないようなものばかりで、様々な種類、色とりどりの花が顔を揃えている。
あ。あの赤い花、すごい綺麗!
一輪一輪が大きなその花は、たくさんの花の中でも一際存在感を放っている。
なんていう花なんだろう?
あれ、絵に描きたいなぁ。
中に人は見当たらない。
ただ、この温室にはまだ奥があるようで。
たくさんの植物で隠れているけれど、その奥に続く道が私の好奇心をくすぐる。
植物が好きな人の家なのかな。
どれもこれも綺麗に手入れされていて、すべての花が生き生きと輝いて見える。
天井もガラス張りになっているところがあって、光が差し込んですごく綺麗だ。
いいなぁ、こんな家!
私の家はそもそもマンションだから、温室なんて夢のまた夢なんだけどね。