君と描く花言葉。
そろそろ覗くのもほどほどにしておかないと通報されそうで、ゆっくりと来た道を歩き出す。
目線だけはなかなか外せなくて、ずっと温室の方を見たままだけど。
この道、人通り少なくてよかったなぁ。
人の家を背伸びして覗くなんて、普通に不審者だよ。
あと、中に人がいなくてよかった。
もし目があったりしたら、それこそ通報ものだもんね。
「あのさ」
「っふぇっ!!!?」
なっ、なに!?
いきなり進路方向から聞こえてきた低めの声に素っ頓狂な声が出てしまったその勢いのまま、条件反射のようにバッと勢いよく顔を向ける。
少しだけ目を見開いた顔と目が合った。
……その瞬間、目をもっと大きく見開いたのは私のほうだ。
いや、近っっ!?
横を向いて歩いていたせいで、あとちょっとでぶつかりそうな今の距離まで私は気付かなかったらしい。
声をかけてくれていなかったら、絶対ぶつかっていた。
……でも、それより断然驚いたことがあって。
「な……る、みやくん?」
「そうだけど」
「…………え、なんで?」
頭が一向についていかない私と違って、彼の顔はすでに無表情に戻っている。
学校でしか見かけたことのない成宮くんの、初めての私服を見てしまった。
白いワイシャツに黒いズボンという、学校の制服となんら変わらないオシャレでもなんでもない格好。
なのに、なんでこんなにカッコいいんだ。
学校にいるときよりちょっと首元のボタンが開けられているからか、それともいつもはズボンにインしているシャツが緩く出されているからか。
いつもと同じような服装なのに、いつもと違ってラフに着こなして軽く腕を捲ってコンビニ袋を片腕に下げて立っている姿は、なぜかすごく様になっている。
……いやいや、別に、だからといってどうということはないんだけど。