君と描く花言葉。
「っ……」
弾かれたように、素早くページをめくる。
違う。これじゃない。
これでもない。
入賞作品はどれももちろん驚くほど上手くて、同じ中学生とは思えないほどのものだったけど、私の目はもうそんなところには止まらなかった。
パラパラとめくれていくページに、先輩の名前を見つける。
あぁ、やっぱり先輩はすごい。入賞したんだ。
そう思いながらも、私の手は先輩のページでは止まらなかった。
「……あった」
そして、最後のページ。
私の目は、そのページにお目当ての絵を捉える。
私の名前は予想通り見当たらなくて、でも、そんなことは全く気にならなくて。
「綾瀬ー……って、あ!こら、勝手に見るんじゃない!」
ずんずんと近付いてきた先生が、私の手から冊子を奪う。
「あーっ!!返してください先生!」
「後日発表するから!
ネタバレしちゃったらつまらないだろ?」
「もう見ちゃいましたって!
だから返して!金賞の絵が見たいの!!」
「あぁ、これな。
描いたの、綾瀬と同い年の男子生徒だってさ」
「……はっ!?」
「驚くよなぁ。中1でこれって。
今回のコンクールはその話題で持ちきりだったよ」
「…………」
「はい、この話題おしまい。
間違っても先輩に入賞してたって言うなよ?」
「……え。ちょっと、先生!」
「あ、探し物見つかったから。
手伝ってくれてありがとなー、気をつけて帰れよー」
さっさと冊子を持って踵を返して行ってしまった先生を、呆然と見送る。
……嘘でしょ。
同い年?中学一年生が描いたっていうの?
そんな、バカな。
だって、つい半年前までは小学生だよ?
同じ年数生きてきて、こんなに違うなんて。