君と描く花言葉。




「エリカ。りんごジュース飲める?」


「えっ?飲めるけど……」


「じゃあ、はい」



どこから持ってきたのか、成宮くんは2つ持っていたコップのうち、うさぎの柄の可愛いコップを私に渡してきた。


もう1つの星空の柄が描かれたコップに、成宮くんが口をつける。



「ありがとう……」



そっと呟きながら、コップに目をやる。


うさぎ柄……ピンク色のそのコップは、成宮くんには似合わない。


来客用……?



温室に入れてくれた上、飲み物まで用意してくれるなんて。


成宮くんは他人なんて全然気にしないイメージだったから、ちょっと意外かも……。



冷やされたりんごジュースを一口飲んで息をつく。



成宮くんは何やら1つの植木鉢を温室の奥に運んでいるようだった。



……あ。あの運んでるやつ、さっきのあの赤い花だ。


存在感がすごくて、綺麗なやつ。



「それ、なんていう花なの?」


「……アマリリス。
向かい合ったアマリリスが話してるように見えるから、おしゃべりって花言葉がある」


「へぇ……。たしかに、話してるように見えるかも」



その植木鉢に咲いているのは二輪のアマリリスで、丁度向かい合うように咲いている。


それが、言われてみれば談笑している女の子のように見えてきた。



「どこに運ぶの?」


「……アトリエ。絵、描くから」


「アトリエ!?」



自分のアトリエを持ってるって噂、本当だったんだ。


……いや、別荘がある時点でアトリエの1つや2つあってもおかしくないけど。



植木鉢を抱えた成宮くんの後ろについて、温室の奥に足を進める。




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