君と描く花言葉。



「ねぇ。成宮くんにはアマリリスは何色に見えるの?」



成宮くんの後ろまで来てから少しの間、話しかけていいのか迷ったけれど。


ついさっき遠慮はしないって決めたばかりなのを思い出して、勇気を出して声を出す。



ずっと思ってたことだ。



彼はいつか、みんなに『見たままを描いているんだ』って言っていたけれど。


薄い黄色で描き始められているアマリリスは、あまりにも真っ赤で、どうやっても黄色には見えない。



「……何色?赤色だよ」


「えっ」


「赤いアマリリスを買ったんだ。そりゃあ、赤いよ」



さらりと、普通に答えられてしまった。


もっと変化球の答えが返ってくると思っていたから、びっくりする。



「じゃあ、なんで黄色なの?」


「うーん……。そう見えるから」


「今、赤って言ったのに?」


「うん。赤だけど、その奥にいろんな色が見える」


「……奥?」


「奥。目で見るんじゃなくて……なんていうんだろう。
頭?心で見るっていうのかな。
そうしたら、奥に色が見えたりしない?」


「……心でって……どうやって?」



全然わからなくて首をひねっていると、くるりと成宮くんがこっちを向いて、ちょいちょいと手招きをする。


一歩ぶんくらいしか離れていなかったけど、その動きにつられてその一歩を埋めた。



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