君と描く花言葉。
「どう?」
目を開けると、私を覗き込む成宮くんが視界いっぱいに広がる。
黄色には見えなかったけれど、なんだか異世界にトリップしていたような感覚がして。
それがびっくりするほど楽しくて、自然と笑顔になる。
「ピンク色に見えた!」
「え。……本当に?」
少し目を見開いた成宮くんに、こくこくと首を振って見せる。
すると、成宮くんは嬉しそうに口を緩めて。
まるで花が咲いたみたいに、ふわりと笑った。
「……そっか。エリカのアマリリスはピンクなんだね」
「でも、黄色には見えなかったよ」
「……それでいいんだ。人と同じものは見えない。
自分だけのアマリリスが、人の数だけある。
俺はただ、それを描いてるだけだよ」
愛おしそうにすぅっと描きかけの黄色いアマリリスをなぞったその仕草との距離が、やけに近く感じて。
……初めて、成宮くんが普通の人間に見えた。
そこで、やっと自分が重大な勘違いをしていたことに気付く。
あぁ、そうか。
違ったんだ。
私は、成宮くんは才能があって、いつも飄々としてて、口数も表情も少なくて、どこか人間味がなくて……なんて、そういう風に思っていたけれど。
そんなの、私が勝手に作り出した単なる虚像だったんだ。
全然そんなことないじゃん。
たしかに才能はあると思うし、飄々としてるとも思う。
でも……こんなに、素敵に笑う人だった。
他の人よりは控えめな表情変化かもしれない。
それでも、たしかに成宮くんは笑ったんだ。
こんなこと、『才能』じゃなくて、ちゃんと『成宮くん』を見ていればすぐにわかっただろうに。
一年半……いや、きっと成宮くんと出会うずっとずっと前から『才能』に固執し続けていた自分に気付いて、笑いが込み上げてくる。