君と描く花言葉。



「……あのさ。よかったら、なんだけど。
……描いてみない?」


「えっ?」


「アマリリス。……エリカの、ピンク色のやつ」



成宮くんがちょっぴり上目遣いをするように私を見ながら、赤いアマリリスを指差す。


ゆらゆらと風に揺れるその花は、描いて描いてと主張しているようだった。


……描いてみたい。


せっかく見えた、私だけのアマリリスを。



成宮くんみたいに上手く描けないとしても、それでもいい。


『上手い絵』じゃなくて『私の絵』が描いてみたいと思ったのは、初めてだ。



「うん。描いてみたい」


「本当!?
……あ、じゃあ、ここらへんにある画材とか自由に使って。
イーゼルとキャンバス、家にいっぱいあるから取ってくる」


「えっ!?」



私が頷いた途端、成宮くんの目の色が変わった。……ような気がした。


キラーンと効果音がしそうなほど目を輝かせて、勢いよく席を立つ。


こんなに俊敏な成宮くんの動きを見たのはこれまた初めてで、呆気にとられてしまう。


表情的には無表情に近いんだけど、でも無表情とはちょっと違うというか……。


主に目が。キラキラしてるように見える。



家に繋がっているのであろうアトリエの奥の道を行きかけて、急にハッとしたように私を振り向くものだから、思わずビクッとしてしまった。


けど、そんな私を気にもとめず、成宮くんは見たことがないほど饒舌に話しかけてくる。



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