君と描く花言葉。
「エリカって、何で描くのが好き?
水彩絵の具?アクリル絵の具とか、油絵の具とか基本なんでもあるけど」
「えっ、えっ?もしかして、ここで描いていいの?」
「……というか、俺がここで描いてほしいんだ。
さっきの心で見るってやつ……前にも何人か同じことを聞く人がいたから、言ったことあるんだけど。本当に見えたのはエリカが初めてなんだ。
だから、エリカの世界、見てみたい」
興奮気味に私を見つめる成宮くんが、まるで珍しい虫を捕まえた子供のように見えて、びっくりする。
私の中の成宮くん像が、また1つガラガラと崩れていった。
成宮くんは落ち着いた大人っぽい人……というのは、消しておこう。
目の前にいる人の顔は、もはや無邪気な子供のそれだ。
「家では……キャンバスなんてないから、画用紙に水彩絵の具で描くことが多いけど。
学校でキャンバスに描ける時は基本アクリル絵の具かな」
「……?紙ではアクリル絵の具は使わない?」
「うーん。特にこれといった理由はないんだけどね。
というか私、あんまり詳しくなくて。なんとなく、イメージで使ってる感じかなぁ。
成宮くんはどれで描くの?」
「俺は、全部。
けど、一番よく使うのはアクリル絵の具。
何にでも描けるから、好き」
「何にでもって。……例えば何に?」
「それとか」
成宮くんが目を向けた先には、壁に掛けられたジョウロがある。
……温室に入った時にオシャレな模様だなって思ったけど。
あれ、まさか成宮くんが描いたの!?
普通にそういう商品だと思ってたよ…!