君と描く花言葉。
「他にもいっぱいある。
無地のものを買ってきて、自分で描くの。楽しくない?」
「楽しそう!」
無地のものはなんだか可愛くなくてあんまり買ってこなかったけど、そっか。自分で模様描いちゃえばいいのか!
そうしたら好きな柄にできるし、楽しいよね。
今度私もやってみようっと!
今度こそ家に入っていった成宮くんを見送り、もう一度ぐるりと温室内を見回す。
……ここは、本当に別世界みたいだ。
ただ花があるだけじゃなくて、よく見ると植木鉢にも様々な絵が描いてある。
窓にも所々白いペンでデフォルメされたお花とか、猫とか鳥とかが描いてあって可愛いし……成宮くんって本格的な絵だけじゃなくて、こういうポップな絵も描くんだなぁ。
温室の中は、見れば見るほどどんどん新しいものが見えてきて。
さらにその全部に遊び心が溢れているものだから……例えるならおもちゃ箱の中を歩いているような、そんな不思議な感覚がする。
誰かが、成宮くんの絵を見て「成宮ワールド」と言っていたけれど。
この空間こそが本当の「成宮ワールド」だよね。
この温室自体が展示物になりそうなくらい。
成宮くんの最大の作品は、もしかしてこれなのかもしれない。
描きかけのアマリリスの絵を載せたイーゼルにも、なにやら文字が書いてある。
「……セ……イジ?」
筆記体で書かれた英語がさらっとは読めなくて、ちょっと苦労したけど。
どうやら、成宮くんの名前みたいだ。
その周りにはツタが描かれていて、装飾になっている。
こんな細かいところまで装飾されてるんだ……。
探せばもっと出てきそう。
まるで隠し絵みたいに、目を凝らして探してみたくなる。
日常生活の中でこんなにわくわくしたのは、いつぶりだろうか。
なんて、浮かれた気分で考えていると。