君と描く花言葉。
ゆっくりと、ギシギシと音を立てる階段を上っていく。
ボロい、というと語弊があるけれど、なんとも古めかしい木造建築物の音だ。
だんだん、なんだかお化け屋敷にでも入っているような気分になってきて、少し焦る。
だ、大丈夫、大丈夫。
ここは成宮くんの家だし。
間違っても変なものはいない……はず、だよね?
そうであって欲しい。切実に。
冷や汗が垂れてきそうな思いとともになんとか階段を登りきると、すぐ右のところの部屋の扉が開いていて。
恐る恐る中を覗いてみる。
そこには……床に倒れている、成宮くんがいた。
「……な、成宮くん!?大丈夫!?」
やっぱり怪我したの……!?
びっくりして、怖さなんて忘れて慌てて駆け寄る。
周りにはイーゼルやキャンバスがいくつも立てかけられていたり、転がっていたり。
ここは物置か何かなのかな。
もしかして、たくさんのものを一気に運ぼうとして転んだとか……!?
「成宮くん!成宮くん!?」
駆け寄っても一向に反応しない成宮くんを、ゆさゆさと揺すってみる。
ど、どうしよう!?
先生……は学校じゃないから呼べないし、お母さん!?
いや、救急車の方がいいかな……!?
パニックになりながら、携帯電話を取り出す。
……ガシッ!
「ひっ!?」
「……エリカ」
突如足首を掴まれて、情けない声が出てしまった。
と、同時に、成宮くんが動いていることにホッとする。
「な、成宮くん!よかった、気が付いた!?
大丈夫?どうしたの!?」
「……ごめん。アトリエにある……コンビニの袋取ってきてほしい」
「コンビニの袋っ?」
「うん……さっき買ってきたやつ。お願い」
「わ、わかった!待ってて!」
訳も分からないまま部屋を飛び出し、階段を駆け下りてアトリエに飛び込む。
机に無造作に置かれていた袋を引っ掴んで、我ながらここ一番早く動いたんじゃないかってくらい最速で成宮くんの元へ戻った。