君と描く花言葉。
「でも、温室は日当たり良いよね」
「天窓は一応開閉できるよ。
というか、描かない時は家の中に入れるから大丈夫」
まあ、そりゃそうか。
日向ぼっこしながらお絵描きねぇ……。
今まで考えたこともなかったから、今からそれが体験できると思うと無性にわくわくする。
あれほど成宮くんと同じ空間で絵なんか描きたくないと思っていたのに、たったの今日1日でこんなに心境の変化があるのだから不思議なものだ。
成宮くんは温室に繋がる扉のそばに、持っていたたくさんのキャンバスを立てかけて、1つだけを持って温室の扉を開いた。
なるほど、この廊下にストックしておくのか。
温室に出ると、ついさっきまで暗いところにいたせいで、少しだけ目が眩んだ。
成宮くんの特製イーゼルの隣に、新たなイーゼルが並ぶ。
どこからか、成宮くんがもう一つ椅子を持ってきてくれて、あっという間に絵を描く空間が出来上がった。
ベンチの側の机に置きっぱなしにしていたうさぎ柄のコップを持ってきて、星空のコップの横に並べる。
うさぎが上を向いた姿をしているものだから、なんだか星空を見上げているようで微笑ましく見えた。
成宮くんが自分の椅子に座ったのに倣って私も椅子に座ってみると、すぐさま声が飛んできた。
「はい。描いて。見てるから」
「えっ……もしかして、ずっと見てるつもりなの?」
「うん」
「……それはちょっと……描きにくいかも」
「なんで?」
「普通、見られてると描きにくくない……?」
「?……全然」
あ、そうか。
成宮くんはよくみんなに注目されてるから、見られ慣れてるのか。
横を見ると、期待に満ち満ちた目と目が合う。
……私は、ちょっと慣れられそうにないかもしれない。