君と描く花言葉。
「案内する」
「!ありがとう……!」
助かった……!
知ってるってことなら、余裕で間に合うだろう。
危ない、お母さんに文句言われるところだった。
ちゃんと来たのに目的を忘れて絵に没頭してしまうなんて、自分でも呆れてしまう。
気付いたのが閉店前でよかった。
というか、こんな遅い時間までお邪魔しちゃっていたのか。
ここに来てから、もう2時間以上も経ってるよ。
少し申し訳なくなりつつ、温室から出る。
私が出たのを確認して、成宮くんは温室に鍵をかけた。
「閉店はいつだっけ?」
「6時半!」
「そっか。なら大丈夫。
一本向こうの道にあるだけだから」
やっぱり私、曲がる道間違えてたんだ。
おかげで成宮くんのことを知れたし、温室も見れて絵も描けたから、結果的には良かったんだけど。
ゆったりと歩き出した成宮くんの隣に並んで、2時間前に来た道を戻っていく。
…………。
……そういえば、こんな風に男の子と2人で並んで歩くことなんて、初めてかもしれない。
私の隣を歩く成宮くんは背が高くて、女の子と歩くよりも存在感がある。
なんとなく落ち着かなくて、そわそわしてしまっていないか心配になる。
チラリと成宮くんの横顔を見上げると、やっぱり成宮くんは何も思っていないように飄々としていた。
「……あ。成宮くん、絵の具ついてる」
「え。……どこ?」
「左のほっぺたのとこ」
「ここ?」
「もうちょっと上!」
成宮くんが手でペタペタと触るけど、微妙に場所がズレていてもどかしい。
「ここ」
言いながら、成宮くんの頬に触れる。
絵の具は乾いていたから、触った瞬間にペリッと簡単に剥がれた。
……けど。